昨年(2004年)にイタリアのAndrea Babichさんよりメールによるインタビューを受け、記事が雑誌に掲載済になった事もあり、サイトの2周年記念として載せる事にしました。
質問は、イタリア語を日本語に翻訳したものです。
大学生2年と3年生の間の春休みに、テーカンという会社が業務用ビデオゲームの作画担当をバイトで募集しており、それに応募したのが始まりです。
テーカンは後にテクモと社名を変えました。
プロジェクト中に作画担当だったのですがゲームの企画を考える機会があり、プロジェクト終了後もそのまま作画兼企画というスタンスでバイトを続け、大学卒業と同時にテーカンに入社しました。
おそらく今では考えられない入社ルートだと思います。
当時のテーカンでは比較的自由に企画内容を考える時間があり、水を吐いて火を消すという主人公のゲームを考え、それを上司の上田和敏さんとともに膨らませていきました。
会社からの依頼という形ではなく、企画者が自発的に発案していったケースに当たると思います。
すっかり忘れていました。
火の消し方で、文字がそろうというフィーチャーだったと思います。
もしかしたら、記憶違いかもしれません。
上司の上田和敏さんがピンボール好きで、ピンボールのフィーチャーをモチーフにしたと思います。
作っている当時はそれほどの評価をいただくゲームを作っているという自覚はチーム内に無かったと思います。
企画3名、プログラマ1名、グラフィカ1名、サウンド1名のチームです。
スフィンクスの背景画像は、グラフィッカではなくサウンドを担当した益子さんが作成したものでした。
ボンジャックが名作なのは、私の手柄ではなく上田さんのゲームセンスのおかげだと考えています。
初めは床で弾むボールで比較的重力落下を忠実にシミュレートしたもので、空中でジャンプボタンを押すと、ボールがつぶれ落下スピードがやや遅くなるというものでした。
非常に操作が難しかったのを覚えています。
そこで、落下スピードが一定速度になると、それ以上加速しないようにして、空中でジャンプボタンを押すと、そこでスピードが0になるという形に変更になりました。
こうしてボンジャックは比較的自由に空を飛ぶ事ができるようになったのです。
質問5の初回の操作方法からの改変は、主に上田さんが行ったものですから、私が自慢する事ではありません。
また、当時のゲーム業界ではあるアイディアをより優れた形に手直ししていく事は、容認されている雰囲気がありました。
こまかな映像表現さえ特許化され、アイディアを実現する事がより難しくなって行っている現在とはかなり異なっています。
爆弾の位置を修正したり、敵のパラメータを修正したり、そして、会社のスタッフでテストプレイをして、その結果を見て、再度、爆弾の位置を手直ししたりとその繰り返しでした。
業務用のビデオゲームは、ぱっと見た瞬間にお客さんの目を引く事を求められます。
そこで、世界各地の奇麗なそして目を見張る様な光景を選んで設定しました。
すみません、忘れています。
確かどこかの夜景があったのではと、おぼろげに覚えているのですが。
グラフィックを担当した石塚理恵さんです。
何故選んだかは覚えていませんが、歌の権利料は払いました。
業務用は家庭用に比べ商品単価が高いので、特に問題になりませんでした。
この回答で度々登場していますが、改めて説明しますと、ユニバーサルでミスター・ドゥを作った方です。上田和敏さんです。
後にテクモを辞めアトラスで女神転生シリーズを手がけました。
私の仕様書が細かいのもこの上田流だと思っています。
ご質問の通り「ソロモンの鍵」は業務用ではあまりぱっとしませんでした。
しかし、基本的なコンセプトだけでなくゲームを通して自分のオリジナルゲームを作っているという自覚がありました。
鶴田オリジナルゲーム一号というような記述を仕様書の扉に書いた覚えがあります。
それが元で折り鶴のキャラクターが登場するわけですが。
上田さんがテクモをお辞めになってからも制作が続いた事もあるかと思いますが、自分なりの作り方ができたと思います。
これは難しい質問です。
操作を入力する機械の優劣は、プレイヤーが感じる物だと思います。
「ソロモンの鍵」は、業務用として作り出したため、私自身はレバー操作が合っていると思っています。
初め敵を倒す事を目的としたゲームとしても考えていたのですが、ダーナの能力が高いため、それを追いつめる敵をバランス良く作るのは難しかったと覚えています。
最後は鍵を取って扉に向かうという事を目的としたパズルゲームに落ち着いたため、障害物としての敵になりました。
業務用に登場するスライムや魔道士は、ダーナと戦う敵として作成されたものです。
敵と戦うという土壌を持ったゲームに、パズル性を加えた事で多様な遊びのできる「ソロモンの鍵」が生まれたのだと思います。
実はPC用のゲームのピットマン見つけて某会社に持ち込んだのは私です。
そこで、ピットマンの手法でパズルゲームが作れないかと考え、氷を出し消しする主人公を考えて、テクモに持ち込んだのでした。
「ソロモンの鍵2」は、はじめ「アイスキッド」と呼ばれるゲームとして開発され、後にソロモンシリーズに加えられたのです。
そのため、ソロモンの鍵と2は似て異なるゲームとなっています。
2は純粋にパズルゲームとして作られていますから、アクション性を求めたプレイヤーからは不評だったようです。
結果、販売数がふるわず今では中古市場で高値をつけているそうです。
皮肉な運命です。
マイティボンジャックは、面白いゲームだと思っています。
あの当時のROM容量からは考えられないくらいのアイディアとギミックが盛り込まれたと思っています。
Game Boy Color の[ソロモン]というのは、モンスターファームの事でしょうか?
そうだとして話しを進めます。
こっそりテクモブースに行った時、スタッフの方が説明してくださいました。「あ、それは敵じゃありません。取ってください」『なんだ、妖精なのかコレ』
全寮制の中学校に入れた子供が大きくなって、その子供と再会した様な妙な気分でした。
ネットワークで接続する事が常識化した今とスタンドアロンで遊ぶ事しかなかった昔とでは、遊び方の違いの着地点を見つけるのに苦労しました。
ほとんど手探りの状態で作ったため、見通しの悪い開発になってしまいました。
自動車王もソロモンの鍵に似て、好きな人は異常に好きというゲームに仕上がっています。
注釈) 自動車王は2005/5/31でサービスを終了しました。